(6)目的達成のための配慮

投稿者: | 2022年4月10日

 日経新聞に次のような記事が載った。

 駅音響案内238台不適切

 鉄道駅で視覚障害者を誘導する音響案内装置のうち、113駅計238台は昨年11月末時点で設置方向などが不適切だったことが28日、国土交通省のまとめで分かった。事業者側の認識不足が原因という。誤って線路に転落する恐れもあり、うち166台は昨年末までに改修。残りも今年3月末までに改修する。(中略)不適切な設置があったのはJRの北海道、東日本、東海、四国4社と、東武鉄道(東京)など私鉄や第三セクター鉄道7社の計11社。駅名は公表していない。

 装置は、列車を降りた後、ホームから出口に通じる階段の位置などを案内するのが目的。(中略)音の聞こえる方に向かって歩けば階段にたどり着ける。

 国の指針は、スピーカーの向きを線路と平行にするように配慮を求めている。複数のホームがある場合、線路に交差する形で音を流すと隣のホームまで届いてしまい、聞こえた人が勘違いして線路に向かって歩いてしまう恐れがあるためだ。

 238台は設置方向などが不適切で、向きを変えたり、音量を小さくするなどの改修を進めている。(後略)(日本経済新聞夕刊 2022.2.9)

 前回のブログでカスタマーインターフェースを構築するにあたってのポイントは、顧客への配慮だと書いたが、まさにその配慮が欠けていた例である。記事にも「事業者側の認識不足が原因」と書かれているが、「認識=配慮」と言ってもいいのではないか。何のためにこの音響装置を設置しているのかを考えれば、その目的が達成されているかどうかの検証があってしかるべきだとも思える。なぜならば本装置は視覚障害者の安全を守るうえで役に立つと判断したからこそ、設置したはずだからである。幸い事故等は発生しなかったようだが、万一設置の不適切さのために事故が発生してしまったならば、その設置目的は果たされなくなり、何のために設置したかが分からなくなる。設置した鉄道事業者は、安全に対する感度が高いから駅音響装置を設置したともいえる訳で、残念な気がするのは私だけではないだろう。

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